マドリッドのルカ-21

明日の飛行機に乗るというルカに見送られて帰国した私達。あくる日の朝である。添乗員から電話が入った。
「ルカさん、飛行機に乗られてないんです」私は腰の力が一瞬抜けるような気がした。とりあえずルカの母親に電話をかける。母親のうろたえ、取り乱した様子が受話器の向こうに大写しに見える。
「どうしよう。もう、ダメだわ。あの時一緒に連れて帰って来るべきだった。荷物なんか、みんな捨てて・・・」
「でも、コンピューターの故障ってこともありうるわよ」
「もう気休め言わないでよ。男の所へ帰ったんだわ。あんなバカだと思わなかった」
「私の家へいらっしゃいよ。成田でもう一度添乗員が確かめてくれるって言ってるんでしょう」
彼女はやって来たが取り乱している。マドリッドで引ったくりにすっかり盗られた時だって、かえって彼女は私に気を使っていて、気丈な母親と思っていたが、彼女は泣いていた。
「お父さんに可愛そうなことした。あんなに喜ばせちゃったのに。どうして、飛行機に引っぱりこまなかったんだろう」
ジンの部屋に電話したと言う。「ルカ、ハポン、ルカ、ハポンって眠そうな声で言うのよ」全く、眠そうとは何事か。人の気も知らないで。しかし、ジンが知らないとなると??ルカは一体どこへ?もう一度、ジンに電話しようとする私に母親は、弱々しく首を振った。
「もう、ルカがマドリッドにいること、ジンに知られたくないの」
私は言うべき言葉を持たなかった。母親は父親からの連絡もあるだろうと家に帰り、わたしも落ち着かない時間を過ごした。午後3時、ルカから電話が入った。私たちの心配をよそに、彼女はキョトンとした声で言ったものだ。
「どうして??ちゃんと飛行機に乗っていましたよ」
ルカはこうして、日本に帰った。しかし、若い彼女の悲しい恋はこれで終わったわけではない。完(No376)
長いことありがとうございました。











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