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2019年3月12日 (火)

蜻蛉日記のヒーローは

「蜻蛉日記」・・・・平安中期、藤原兼家・・・当時26才くらい・・にプロポーズされて不安ながらも結婚した19才の作家…彼女は菅原孝標の娘と呼ばれていますが名前はわかりません。というよりも、皇后とかになるまで女性には名前の記録が残されていなかった。清少納言も紫式部も名前ではありません。職名です。兼家との間に生まれた息子道綱が右大将になったので、作家は「右大将道綱の母」とよばれています。


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上はちょっと違うけど「落窪物語」岩崎書店の挿絵 沙月ゆうさん 葵祭のようす

 

 何人もの妻をもつこの時代の妻にとって一番の苦しみは嫉妬です。兼家は、直接親に結婚を申し込み、下手クソな字で品のない紙に歌を書いてよこします。当時はまだ位もたかくない、ぺーぺーですのに。その押しの強さに負けて結婚。

 最初は熱心に通ってきますが、浮気なやり手・・結局、9人の妻がいた???ともいいますよ。も・お・お…腹が立って腹が立って!!!たまに来てくれたら来てくれたで、腹立ちまぎれで怒りまくり???夫は不機嫌に帰ってしまう。またまた悲しい。そんな自分に嫌悪感を抱いて苦しみます。同じ屋敷の姉のもとにはせっせと律儀に男が通ってきているのに。欲求不満、イライラは募るばかり。

 ある時で、そわそわと上の空でかえっていった夫のあとを下男にあとを尾行させます。とある町中の女の家に入っていき、その夜は泊まったという報告。そのうちに子供もできたと世間の噂のたねに・・・も・お・お・・・自我とプライドのがかたまりの女主人公は爆発しそう。そりゃあそうでしょう。本朝三美人といわれたほどの美人で、歌もよむ才女はプライド高く強情です。ドフトエフスキーを思い出すほど、その鬱屈に徹底的に執着する心理描写がなんだか近代的、文学的???と思えてしまいます。


 なげきつつ 一人なげぬる世の あくる間は
   いかに久しき  ものとかは知る



 やがて町の女は出産。子供が死んだときいて喜びます。暗いけど・・・わかる・・・そのうち兼家の女への関心もうすれ、赤ん坊も実は父親は別の男だったのだとか・・・世間の口は・・・どうしようもない。 幼い道綱が、父親が帰ろうとすると、まとわりついて「いつ来る」と問う切なさ・・・・20年ほどでフッツリと日記はおわりますが、作家はその後20年ほどは生きたということです。



 でもねえ…この兼家という男、女が一人で立ち向かえるほど単純なタ・マではなかった。ゆく末は太政大臣ともなり、かの藤原道長の父親ともなった男です。もっとも、道長は時子と呼ばれる他の妻の子ですが。


 天皇花山天皇という人・・・父親の冷泉天皇は狂疾・・・時に常規を逸した行動をなさる・・・そして退位。そのあとを継いだ花山天皇も同じ血をもっていました。
16才で即位、お気に入りの女房に死なれて出家したいともらすようになります。そこに付け込んだのが兼家一家。真っ暗な紫宸殿から夢月の夜に天皇をこっそり連れ出し、門を出たところで車にのせ、前後をとりかこんで寺へ・・・ためらう天皇に「自分もすぐ後を追い、髪をおろします」といって、まんまと出家させてしまいます。天皇がいなくなった御所は大さわぎ。その時にはもう3種の神器は皇太子の手元に・・・うかうかと謀略のってしまった花山天皇は、そのあとどんなに悔しがったことか・・・・



 さて、そのやり手男の兼家、後に続く、一家の兄との権力争いにも結局は勝利し、東三条邸と呼ばれる大きな屋敷を構え、天皇には娘を嫁入りさせ、摂政となって権力を独占するという超ド級の怪物。異腹の妻からは道長がでます。下はマンガ「日本の歴史」中央公論社 石ノ森章太郎から。この物語の本当の主人公はこの兼家???じゃないか???しらね。



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 当時は男が女の家に通うのが普通だったようで、むしろ娘は生まれた家で大事に育てられ、夫や子も娘の実家で世話をし、家を継いでいったようです。

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コメント

「蜻蛉」の字の読み方は、この場合は「かげろう」ですが「あきつ・あきづ」と読むことが古文では多い気がします。

いずれにしても、「かげろう」も「あきつ」も「トンボ」のことを言い表す古称ですね。

おもしろいのは、福島県の我が地域の方言で「トンボ」のことを「あげづ」ということです。ただ、今は使うのは高齢者の一部だけにはなりました。

投稿: 玉井人ひろた | 2019年4月 2日 (火) 08時44分

コンニチハ^^
流石お彼岸 暖かくなってきました^^

蜻蛉日記 朗読で聞いています

https://youtu.be/3RNNMAPvRdc

https://youtu.be/38JFBTbk3Jw

https://youtu.be/dETXmpt5PbI

目が遠くなって 本が読めなくなってきました○o。.
  通い婚時代・・・やるもんだわね~ (^_-)-☆

https://youtu.be/icERx8fGSak

投稿: すみとも | 2019年3月18日 (月) 13時50分

kazuyoo様  私も平安時代に興味を持ったのはまだまだ日が浅いのですが、京都に住んでいるだけに土地勘もあってとても面白いです。ともかくこの時代、政治は無茶苦茶、往来には追いはぎ、泥棒、餓死、飢饉、疫病なんでもあり。庶民には生きつらい世の中だったようです。最近思うのですけど、こんな末世だからこそ地獄が恐ろしいとか仏罰をおそれるとかの宗教が生まれたのでしょう。最近の人間も「悪いことをしたら地獄に落ちる」とか・・・もう一度思ったほうがいいのかもしれませんね。


ちゃぐまま様  お久しぶりですね。 高橋のぶ子「業平」ですか。覚えておかなくっちゃ。彼女もすごいものを書いてますね。業平の兄、行平…そう…あの行平鍋・・・おかゆを炊く土鍋の元のひと??とか・・・京都には「因幡薬師堂」が烏丸五条のあたりにあって、行平が因幡の海から拾い上げた薬師観音さまがご本尊なんですって、非公開らしいですけど・・・次々と面白い興味の種が表れて、ちっとも退屈しない古典です。もっと若い時に知っていたらなあと残念の思うこの頃です。


おばさん様  「鴨川日記」ですか???また機会があったら読んでみたいとおもいます。白洲正子は何度か読みかけてはやめてしまった人です。苦手・・・なんでしょうか。でも…そのうちに・・・


投稿: 山口ももり | 2019年3月17日 (日) 11時33分

現代文学のことかと読み直しました。
何時の世も男と女は複雑で、もっと純粋な
愛の形はなかったのでしょうか?
でも《蜻蛉日記》に興味湧きました。
今日購入した本は《鶴川日記》
白洲正子の生き方が好きなのです。

投稿: おばさん | 2019年3月16日 (土) 22時30分

お久しぶりです。
遠い昔に読んだ記憶がありますが、嫉妬の記憶だけが・・。
ももりさんのあらすじをみて、こんなに面白いのだと
分かりました。
日経夕刊では、高橋のぶ子「業平」が連載。同じく業平が
あちこち女人を訪ねますが、挿絵が美しく殿上人らしい
調べを奏でています。
朝刊が「ワカタケル」、雄略天皇の小説で、ダイナミックな表現は国造りにぴったりの表現。池澤夏樹です。
女人も沢山ですが、「嫉妬」はないのです。
国造りは男女の云々以前の大きな問題だったのが
伝わります。

投稿: ちゃぐまま | 2019年3月15日 (金) 07時31分

上流階級の方は綺麗な着物を着て優雅な暮らしぶりです。
大事にされた女性もいるのに、記録に残らないとはですよね。記録が有るから、生きた、幸せだったにはならないでしょうけれど。
嫉妬、こればかりは、ですね。それにしても9人とは。おどろおどろしい男女関係です。
娘の実家の主は母親?、そうでもないみたいなのを読んだ気もします。でもまあ、嫌いになればお互いに、あっさりしたものだったかも、勝手な想像です。

投稿: kazuyoo60 | 2019年3月12日 (火) 14時27分

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