« マドリッドのルカ-15 | トップページ | マドリッドのルカ-17 »

2006年7月22日 (土)

マドリッドのルカ-16

Furamennko_009
 「ジンは昼間わたしに言ったわ。娘さんはいつでもお返ししますって」
「そんな、急に、そんな・・・」ジンの、あのまばらにすいたソッ歯を思い出してむかむかしてきた。
「このチャンスを逃すと帰れなくなるわよ。飛行機のチケットが高いものなのは知ってるんでしょう」
 私たちはこもごも説得したがルカはウンとは言わなかった。私たちの2日目はこうして過ぎて行き、合図の電話をして、ルカはジンの元へ帰って行った。  
 短い、寝苦しい夜の後の朝がきた。私たちはもう、どうしても連れて帰る気持ちになっていた。しかし、同時にジンの態度が急変しないだろうか。刃物を持ち出したり、部屋に閉じ込めてしまったりしないだろうか。私たちは作戦を練った。ルカの母親が盗られたパスポートの再発行の為にルカ自身のパスポートが必要だという電話をかけた。ルカが現れるまでの間、私たちはどんなに気をもんだことだろう。現れたルカはいたずらをした子供のような顔で言った。
「ジンはもう勘ずいてる。パスポートがいるなんておかしいって」
「もう、飛行機のチケット取っちゃったわよ」
「ええっ」ルカは驚いたが、「どうしても、もう一日待って欲しい」と譲らなかった。
「今日は私の打ち合わせの日だけど、ジンは来るかしら」
「さあ、君は君の好きなようにするんだから、僕は関係ないって言ってましたけど」
 私はもうジンの顔も見たくない気分になっていた。あのいびつな小さな部屋のダブルベッドを見たときから、私はジンを許せなくなっていた。ルカの母親からの送金が途切れ、ルカはジンの部屋に転がり込んだ。最初は2つのベッドだった。ある夜、ジンはルカを女にした。「1週間くらい、怒って口をきかなかった」とルカは言ったのだ。
「パスポートは持って来た?」ルカはうなずいて、「カードもスーツケースの鍵も、大切な物は一式持ってる」と、ウエストポーチをたたいて笑った。
「デカシタ。ルカちゃん」
「彼はもう、私は日本へ帰るような気がするって言っています」私は、この際、荷物を全部捨てても良いと思ったが、ルカはきちんと後片付けをしたいと言う。母親も「この娘はいっぱい高価なものを持ってきてるの」と言う。
「大体、高価なブランド品に身を包んだ若い娘が一人、外国で動き回るなんて、カモネギもいいとこだ」と私は腹の中で舌打ちした。日本人は金も大して無いのに、あるように見せたがりすぎる。
「じゃあ、一日だけ遅れて帰るわね。オープンの往復チケットは片道より安いんだし、戻りたかったら、又、マドリッドへ来れるじゃない」しかし、本当にルカ一人でジンの所から抜け出せるだろうかとの不安は色濃くあった。
 十一時かっきりにジンはやって来た。(No372)

|

« マドリッドのルカ-15 | トップページ | マドリッドのルカ-17 »

コメント

ドキドキしながら読んでいます。こんばんわ、ももりさん。さあどうなるのでしょうか?ルカちゃんは無事に日本に帰る事が出来るのか?母親の「高価なもの沢山・・」には??です、本人を連れ帰るのが目的なのに・・これは帰れないと見ました。当たっています?

投稿: nyar-nyar | 2006年7月22日 (土) 22時49分

マドリッドのルカも続きを読むより、まとめて読むとなかなか読み応えがありますね。そして益々ルカとジンとの関係がよくわからない。ジンが胡散臭い人だということはわかるんだけど、イマイチ人間像がつかめない。それが面白いんだけど。あんなみすぼらしい部屋にも臆せず、堂々と案内するんだものね。ルカのパスポート握っているのも解せないし、何故ルカがあんな男にくっついているかがとても疑問ですね。母親やももりさんがあんなに説得しても・・・・いくら盲目的だといっても・・・・・何となく林芙美子の「浮雲」思い出しますね。どうしようもない関係。蓼食う虫もすきずきというけどジン氏に何か魅力があるのかしら。次はどうなっていくでしょうか。

投稿: ミッチ | 2006年7月22日 (土) 22時19分

こんばんは!

なかなかおもしろい展開ですね。
続きが楽しみです(^^)

投稿: むろぴい | 2006年7月22日 (土) 21時26分

先日の新聞に この23日に春日大社で親と子の写生会が開催されるとありました。子どもを連れて参加していた昔を思い出しました。

投稿: 酒徒善人 | 2006年7月22日 (土) 09時29分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« マドリッドのルカ-15 | トップページ | マドリッドのルカ-17 »