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2006年7月18日 (火)

マドリッドのルカー12

_033
 しゃれた新婚家庭を考えていたわたしの目に、厳しい現実のみがむき出しになってあった。
2畳くらいの粗末でいびつな部屋、ダブルベッド一つで部屋はいっぱいだ。押入れになった棚が一方の壁を占領している。棚の上に置かれたプリンが妙に物悲しい。クーラーも冷蔵庫もない部屋のよどんだ空気をかき回すものは、私がルカにおみやげに持ってきたうちわのみである。ルカの性分なのだろう。キチンと整理されて不潔感はない。ルカもジンも恥じるでもなく淡々としている。私と母親は急に疲れてベッドに座り込んだ。
 そうだったのか。ルカはこの小さな部屋で仕事もなく、帰ることもできず、夢だけを食べて暮らしていたのか。ジンは相変わらず饒舌である。同じビルの4階にあるというプロダクションにも立ち寄ったが、昼休みで扉は開かなかった。「このすぐ近くに額屋があります。そこならぼくの顔で安くしてくれるんだ」
 グランビアの大通りからほんの一ビル入り込んだだけの細い通りに額屋はあった。ここもやはり昼休みで人影はない。スペインの午後は2時から4時までどこも店を閉じて、人々は昼食と午睡に家に帰ってしまうのだ。どす黒い濁った顔色の、ひどい格好の女がフラフラと、夢遊病者のように行ったり来たりしている。盛り上がった胸の半分こぼれそうなドギツイ化粧の女がこれも、ゆっくり行ったり来たりしている。ルカがささやいた。「売春婦よ。こっちの人は何しろグラマーが好きなの」ドギツイ化粧の若い方はまだしもわかる。だけど、もう一方のひどいほうはどうだ?私はルカの母親にささやいた。「あれでも買う奴がいるのかしら」ジンが言った。「この辺は麻薬がよく売買されている所ですよ。。私とルカの母親は扉のくぼみに体を押し付け、ルカとジンが街頭の側で私たちを守る格好である。「ホラ、注射器が落ちている」私はたまりかねて叫んだ。
「もう結構。こんな所でわたしは額を買いません」(No368)

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コメント

こんばんは!

ももりさん、このような現実を直視されていた経験をお持ちであったのですね・・・

「夢だけを食べていた」という表現、とても痛切な感じを受けました。

投稿: むろぴい | 2006年7月19日 (水) 22時10分

京都の大雨は峠を越えましたか?祇園祭りも散々でしたね・・・・・。こちらは雨量はたいした事ないのですが、シトシト降っては止み、降っては止みです。

ルカのお話もシリーズ12になったのね。スペインの裏どうりの麻薬の売買もされているその場所、早く逃げ出さないと・・・・・・。
ルカちゃんを連れて、早く日本に連れて帰って!
ママのショックが心配です。

投稿: junちゃん | 2006年7月19日 (水) 01時02分

ますますジンが汚く見えてくるのは私だけ?
ルカちゃんも分かっていて、だけどどうにもならない、そんな感じかしら?それとも今のたった2畳ほどの部屋に満足している訳?母親とももりさんのその時の様子が手に取るように分かります。
私が母親だったら首に縄を付けても引っ張って帰国します。四の五の言わせません!今怒っているんです、ジンに!

投稿: nyar-nyar | 2006年7月18日 (火) 16時09分

おはようございます。
ルカさん、夢を食べてスペインにいたのですか~~~。
ももりさんの話は、ノンフィクションだとしても、ももりさんの文章が読みやすく引き寄せられる文章なので、まだどんでん返しがありそうな気がします。
ルカさんのその後はどうなったか、気になります。

投稿: 浜辺の月 | 2006年7月18日 (火) 09時02分

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